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2018年6月

2018年6月30日 (土)

調査屋のライヴァル(企画投稿)

今日のエントリーはドクガク氏が企画する「弁理士の日記念ブログ企画2018」への参加です。7/1日は弁理士の日、自分は弁理士ではないけどテーマが「知財業界のライバル」ということらしいので僕でも書けますよねw
特許の調査屋にとってライヴァルってなんだろう?って考えてみたら、少し前にtwitterにタイムリーな投稿をしていたことを思い出しました。というわけでこの時の投稿を少し手直ししてupしてみました。ちなみにtogetterまとめ
 の後半部分にあたります。

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ここで「進歩性」と「特許事務所の特許調査」の関係に話題を移します。無効資料調査を行う場合、事務所だろうが調査会社だろうが対象特許の進歩性の議論に留意して調査方針を策定するのは当然のことです。(それができない調査会社はあるかも…)

ただし調査会社は当事者でも代理人でもないので、弁理士資格無しに進歩性の論理を自分たちで勝手に組み立てて「これとこれを組み合わせると無効にできそうです」というようなことを言う(報告する)ことはできませんし、あえてやりません。調査会社は進歩性の議論をふまえつつもあくまで依頼元との合意の上で、探すべき資料はどんな記載がある資料かという検出条件を明確化し、条件に適合した資料を検出して報告するという形式になっています。つまり報告書内で基本的に無効可能性について触れません。

それに対して特許事務所は弁理士自らが進歩性を否定する論理づけを導き出したうえで調査を行い、その結果について無効可能性への言及を含めて報告書を書くことができます。その点については調査会社ができない優位性を持っていると言えます。

しかしその優位性が実は盲点ともいえます。というのは弁理士の行う無効資料調査では、進歩性の組合せを考えながら資料を探す傾向にあります。つまりつぶす対象をABCDとして、ABCが見つかったからあとはABDを見つければ無効化できそうだ…という具合です。このやり方は一見合理的ですが問題があります。まずは「何かを考えながら探し物をすると見落としやすい」という事、次に途中で検出対象が変わってしまっている点です。どちらも特許調査に限らず物を探す時には避けるべき事でしょう。

そして一番重要なのが「知りたい事」と「探し出すべき物」の相違なのです。「無効化できる資料」が知りたくても、それがどんなものかを明確化しなければ、探し出すべき資料を決めないまま調査をすることになります。その状況では結局のところ、なんとなく対象特許に似たようなものを抽出するような検索式を立て、その中から論理付けの組合せに使えそうな資料をピックアップする事にしかならず、捜すべき資料を探しつくすという作業には至らない可能性が高いのです。

それに対して調査会社は「探し出すべき物」を明確化して該当する資料を検出するという方策に徹します。それは弁理士じゃないからという理由以上にその方が良い調査になる、つまり「知りたい事」を得るのに最適な方法であるという事を熟知しているからなのです。

というわけで「進歩性の議論も全てお任せで無効化できる資料(組合せ)を見つけてください」という要望であれば特許事務所に依頼すべきでしょう。しかし進歩性について自分達の解釈に基づいてきっちり探すのが希望なら調査会社の方が精度よく効率的に調査すると断言します。
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というわけで調査屋にとって弁理士が資格故にライヴァルになる事は考えにくく、結局は調査スキルがあるかないかという身もふたもない話だと思います。

2018年6月26日 (火)

特許調査は目的ではない

特許情報を調べるという行為は、通常は欲しい情報があって初めて必要性が生じてきます。例えば、自社の発明に特許性があるか、実施しようとする技術は権利的に問題がないか、ある技術分野においてどんな先行技術があるか…こういうことを知りたいから行うのであって、別に「調べたいことがあるから調べる」なんて酔狂は話はめったにないのです。それがタイトルの意味するところです。では、なぜそんなことが問題になるかというと、調査を希望する人の目的と実際に行う調査の「探し出す物」の間に溝があるからなのです。

例えば○×△□が特許侵害していないか知りたいと思った時、探すべき公報としては○×△□そのものだけではなく上位概念を権利範囲とする公報も含まれます。とはいえ例えば「ハイブリッド自動車」「遺伝子組換作物」なんて原理そのものを権利として有する特許なんてありそうもない。ではどこまで記載された公報なら有り得るか、どういう公報を探すべき対象と想定するのか、そこまで考慮しないと「探し出す物」「探す場所」を適切に設定することができなくなります。つまり「知りたいこと」という目的を実際の調査作業に適用するために検出すべき資料を明確に定義する必要があるのです。ですからタイトルは「調査目的は検出対象ではない」とした方が正確かもしれません。

依頼元が実務者に調査を依頼する時は特に注意が必要です。特に「◎×▽□に関する資料」の抽出の様なテーマ収集調査の場合、依頼元が知りたい事と実務者が検出した資料に齟齬が生じる事がよくあります。これも「◎×▽□に関する」資料とはどんなものなのか、どういう資料を検出すべきなのかという事を依頼元と実務者できちんと合意していないことに原因があります。つまり調査目的そのものが検出対象にはならないという代表例でしょう。

特許調査は目的ではない/調査目的は検出対象ではない、という事は調査を行う者も依頼する側も意識した方がよいでしょう。

現在では特許調査の教科書やセミナーなどで調査方法を教わる事ができます。しかしその多くは、「こういう資料を探したい」時はこういう手法を取ればよいという話であって、「こういうことが知りたい」時にどんな資料を探すべきなのかまでは踏み込んではいません。探し方を教えてくれるサーチャーはいても、元来の目的を実際の調査作業に落とし込むスキームまで意識して指導できる人は稀有でしょう。これも特許調査の目的と対象の関係に対する世間の意識の低さのあらわれじゃないでしょうか。

2018年6月21日 (木)

J-PlatPatの闇 その1

今年(2018年)3月にJ-PlatPatは機能改善された事になっていますが、その実態はとても改善とは思えない改悪が起きているという事がいくつか明らかになっています。そこで僕が気になっている問題点をとりあえず一つ挙げます。

例えばこれは2018年6月14日(木)の朝9時過ぎにおける状態です。

特許庁の公報発行予定表では2018年6月14日に特許公開公報として特開2018-088831~093730が発行されることになっています。そして特許・実用新案番号照会ではこの範囲内の任意の公報が収録されていて出力可能になっています。試しに特開2018-093730はパナソニックIPマネジメント出願の「無線電力伝送のための送電装置および…」という公報です。しかしこれを特許・実用新案検索の方で、タイトルや出願人を基に検索しようとしても(1)ヒットせず、この公報が収録されていないことがわかります。
そこでこの特許・実用新案検索で<公開日=20180614>で検索するとヒット件数が217件になりますが、一覧表示を見るとヒットした文献は全て特許「登録」公報(特許6085063から特許6343088まで217件)になっています。つまりこの時点では2018年6月14日に発行された特許公開公報は収録されておらず、前日までに収録された特許登録公報の「書誌事項データ」のファイルに公開日として20180614と入力されている公報のみがヒットした、と考えられます。

ちなみにこの状態、午後3時頃に再度<公開日=20180614>と検索すると4900件(2)ヒットします。つまり特許・実用新案検索では当日に発行された公開公報全件が「午後3時頃には」収録されている事がわかります。つまり特許・実用新案番号照会と特許・実用新案検索ではデータアップ時刻にタイムラグが存在しているという面倒くさい状態になっています。
そして更に問題なのは特許・実用新案検索の文献蓄積情報には朝の時点で6/14分、つまり特開2018-093730まで収録されていると記載されている事です。これは明らかな欺瞞としか言いようがありません。

木曜日の公開公報発行日だと発行件数が明らかに少ないのでわかりますが、さらに危ないのは登録公報発行の水曜日。公開(等)公報が発行されていない1割弱の特許公報のみがヒットしないので件数的に気がつかない可能性があります。

というわけで皆様にご忠告します。SDI等を行う時に公報発行日だからといって朝一番で検索しても正しい結果はまったく得られません。興味ある方は木曜日9時過(~15時頃)に試してみてはいかがでしょうか。


(1)以前のテキスト検索では公報番号等による検索が可能だったが、今年3月の機能改定によって特許・実用新案検索における番号検索が不可能になりました。もしかしたらこのバグを知っていて番号検索機能を外したのかも?
(2)088831~093730は計4900件、つまり抜け番等なく発行されています。

2018年6月19日 (火)

特許調査とは探し出すこと?

一般の文献調査では所望の資料を検出することが作業の目的となります。では特許調査も同様に資料を検出することが作業の目的なのでしょうか?

例えば侵害回避調査の場合、技術の実施に障害となるような公報がない方が嬉しいわけで、存在しないのであれば「ありません」という報告が望まれます。その一方で無効資料調査は、障害となる公報を無効化できる資料を見つけることが目的ではあります。しかしながら審査(審判、裁判)を経て権利が確定された特許はそれだけ先行資料が調査されており、所望の資料が本当にない可能性もあります。実務上は時間やリソースの制限もあり「これ以上探してもなさそう…orz」と見切りをつけるために調査を行わなくてはならないケースだってあります。従って特許調査は所望の資料を「探し出す」というより所望の資料が「あるかないかを見極める」作業と言った方が適切と考えられます。

とはいえ「あるかないかを見極める」と一言で言っても、「ある」と「ない」では全く異なります。所望の資料が「ある」ことは1件でも該当する資料を検出すれば、見極めるどころか存在すると「証明」することができます。つまりどんなにひどい調査であっても見つけてしまえば勝ちなのです。それに対して所望の資料がないことを証明するのは所謂「悪魔の証明」であって困難ですから「ないだろう」と想定するしかないのです。しかし特許調査の結果所望の資料が検出されなかったとしても「本当にそんな資料はない」のか「探し方が悪くて見つけられなかった」のか判定する手立てはありません。資料がないことを見極めるのは非常に困難なのです。

つまり特許調査は所望の資料が「あるかないかを見極める」作業であり、資料が「ないことを見極める」ことにこそ調査の難しさであり醍醐味でもあると言えるのです。

世間の特許調査の指導では所望の資料をより効果的に検出するやり方については教えてくれます。それ自体は重要な事ですが、所望の資料がないことの見極め方という観点から指導することはほとんどないのではないでしょうか。

自分は特許調査の仕事について以来、「あの人に頼めば見つけてくれる」より「あの人が探して見つからないのだからないんだよ」と言ってもらえるような調査屋を理想として約20年間業務を続けてきました。

じゃぁどうやったら「ない」ことを見極められるのか?その為にどういう調査をすれば良いのか、この点については長くなりますしまだ文章も煮詰めてないのでw、しばらく後に続けて投稿する予定です。

2018年6月17日 (日)

特許調査は3種類

特許調査も文献調査の一種なので、所望の事項が記載されている資料を見つけるという事に違いはないのですが、特許調査の場合は特許制度自体の在り様に起因する特有の条件が生じます。この特許調査の独自性の元になっているのが「特許性」「権利性」で、これらによって<探すもの><探す場所>が一義的に決定するという特徴を有します。

特許が成立するためには特許性を有する事が必要であり、特許性を否定する資料を調べるのが特許性の調査です。自分の出願に対して行う出願前調査や他者の問題特許に対して行う無効資料調査などが該当し、ここではまとめて先行調査と呼んでおきます。対象となる発明/出願の新規性や進歩性を否定する資料が<探すもの>で出願日前に公知になった資料が<探す場所>になります。それに対して自分が実施しようとする技術に対して障害となる特許を調べるのが権利性の調査です。この場合は実施(予定)技術を請求の範囲に含む公報が<探すもの>で実施国で生存している公報が「探す場所」になります。

それ以外に「特許性」や「権利性」から直接的に<探すもの><探す場所>が決まらない調査があり、ここでは収集調査と呼んでおきます。これが通常の文献調査で行われるような「○×△□な特徴を有する」事が記載された資料を検出する調査です。この場合は<探すもの><探す場所>を調査依頼者(もしくは実施者)が任意に設定する必要があります。

まとめると特許調査は<探すもの><探す場所>という観点から「先行調査」「権利調査」「収集調査」の3つに分けられ、前者2つでは特許制度の在り様故に検出対象と調査範囲が一義的に設定される、ということになります。

2018年6月15日 (金)

そもそも調査とはなにか

特許調査について考える前にまず「調査」について考えてみたいと思います。そもそも調査とは何をする事でしょうか。これは英語で考えてみると見えてきます。特許調査は英語でPatent Search、つまり調査に対応する語はSearch。このSearchという単語は動詞にもなりますが、動詞の時には文法的に以下の様に使います。

Search <場所> for <人/物>

これをあえて訳すとすれば<人/物>を求めて<場所>を探す…という感じになります。日本語では「財布を探す」「公園を探す」と<人/物><場所>どちらでも使い得ますが、英語では<場所>が必ず目的語になります。言うなればSearchとは対象物を探し出すために特定の範囲をくまなく見る、というのが本来の意味です。「サーチ」ライトが動いて闇夜をくまなく照らし不審者を発見する…そんなイメージでしょうか。

つまり調査とは目的物を検出するためにある領域に目を凝らす作業であるという事ができます。だからこそ調査では目的物つまり「探すもの=検出対象」と領域つまり「探す場所=調査範囲」を明確にすることが重要になります。

2018年6月14日 (木)

ご挨拶

このブログは特許調査歴約20年の筆者が日ごろ特許調査について考えている事、特に世間で意識されてない、もしくは誤解されている事や他人とは異なる意見を少しずつ書き綴っていきます。

なお、ここでいう調査とは、市場調査(market research)等の用法、つまり現況の解析というよりは、通常の特許調査とか先行例調査とかの使い方で意味する「資料の探索」と定義しています。

twitterになれたせいかあまり長い文章は書けなくなってきているので気長に見守っていただければ幸いです。

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