調査屋のライヴァル(企画投稿)
今日のエントリーはドクガク氏が企画する「弁理士の日記念ブログ企画2018」への参加です。7/1日は弁理士の日、自分は弁理士ではないけどテーマが「知財業界のライバル」ということらしいので僕でも書けますよねw
特許の調査屋にとってライヴァルってなんだろう?って考えてみたら、少し前にtwitterにタイムリーな投稿をしていたことを思い出しました。というわけでこの時の投稿を少し手直ししてupしてみました。ちなみにtogetterまとめ の後半部分にあたります。
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ここで「進歩性」と「特許事務所の特許調査」の関係に話題を移します。無効資料調査を行う場合、事務所だろうが調査会社だろうが対象特許の進歩性の議論に留意して調査方針を策定するのは当然のことです。(それができない調査会社はあるかも…)
ただし調査会社は当事者でも代理人でもないので、弁理士資格無しに進歩性の論理を自分たちで勝手に組み立てて「これとこれを組み合わせると無効にできそうです」というようなことを言う(報告する)ことはできませんし、あえてやりません。調査会社は進歩性の議論をふまえつつもあくまで依頼元との合意の上で、探すべき資料はどんな記載がある資料かという検出条件を明確化し、条件に適合した資料を検出して報告するという形式になっています。つまり報告書内で基本的に無効可能性について触れません。
それに対して特許事務所は弁理士自らが進歩性を否定する論理づけを導き出したうえで調査を行い、その結果について無効可能性への言及を含めて報告書を書くことができます。その点については調査会社ができない優位性を持っていると言えます。
しかしその優位性が実は盲点ともいえます。というのは弁理士の行う無効資料調査では、進歩性の組合せを考えながら資料を探す傾向にあります。つまりつぶす対象をABCDとして、ABCが見つかったからあとはABDを見つければ無効化できそうだ…という具合です。このやり方は一見合理的ですが問題があります。まずは「何かを考えながら探し物をすると見落としやすい」という事、次に途中で検出対象が変わってしまっている点です。どちらも特許調査に限らず物を探す時には避けるべき事でしょう。
そして一番重要なのが「知りたい事」と「探し出すべき物」の相違なのです。「無効化できる資料」が知りたくても、それがどんなものかを明確化しなければ、探し出すべき資料を決めないまま調査をすることになります。その状況では結局のところ、なんとなく対象特許に似たようなものを抽出するような検索式を立て、その中から論理付けの組合せに使えそうな資料をピックアップする事にしかならず、捜すべき資料を探しつくすという作業には至らない可能性が高いのです。
それに対して調査会社は「探し出すべき物」を明確化して該当する資料を検出するという方策に徹します。それは弁理士じゃないからという理由以上にその方が良い調査になる、つまり「知りたい事」を得るのに最適な方法であるという事を熟知しているからなのです。
というわけで「進歩性の議論も全てお任せで無効化できる資料(組合せ)を見つけてください」という要望であれば特許事務所に依頼すべきでしょう。しかし進歩性について自分達の解釈に基づいてきっちり探すのが希望なら調査会社の方が精度よく効率的に調査すると断言します。
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というわけで調査屋にとって弁理士が資格故にライヴァルになる事は考えにくく、結局は調査スキルがあるかないかという身もふたもない話だと思います。
特許の調査屋にとってライヴァルってなんだろう?って考えてみたら、少し前にtwitterにタイムリーな投稿をしていたことを思い出しました。というわけでこの時の投稿を少し手直ししてupしてみました。ちなみにtogetterまとめ の後半部分にあたります。
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ここで「進歩性」と「特許事務所の特許調査」の関係に話題を移します。無効資料調査を行う場合、事務所だろうが調査会社だろうが対象特許の進歩性の議論に留意して調査方針を策定するのは当然のことです。(それができない調査会社はあるかも…)
ただし調査会社は当事者でも代理人でもないので、弁理士資格無しに進歩性の論理を自分たちで勝手に組み立てて「これとこれを組み合わせると無効にできそうです」というようなことを言う(報告する)ことはできませんし、あえてやりません。調査会社は進歩性の議論をふまえつつもあくまで依頼元との合意の上で、探すべき資料はどんな記載がある資料かという検出条件を明確化し、条件に適合した資料を検出して報告するという形式になっています。つまり報告書内で基本的に無効可能性について触れません。
それに対して特許事務所は弁理士自らが進歩性を否定する論理づけを導き出したうえで調査を行い、その結果について無効可能性への言及を含めて報告書を書くことができます。その点については調査会社ができない優位性を持っていると言えます。
しかしその優位性が実は盲点ともいえます。というのは弁理士の行う無効資料調査では、進歩性の組合せを考えながら資料を探す傾向にあります。つまりつぶす対象をABCDとして、ABCが見つかったからあとはABDを見つければ無効化できそうだ…という具合です。このやり方は一見合理的ですが問題があります。まずは「何かを考えながら探し物をすると見落としやすい」という事、次に途中で検出対象が変わってしまっている点です。どちらも特許調査に限らず物を探す時には避けるべき事でしょう。
そして一番重要なのが「知りたい事」と「探し出すべき物」の相違なのです。「無効化できる資料」が知りたくても、それがどんなものかを明確化しなければ、探し出すべき資料を決めないまま調査をすることになります。その状況では結局のところ、なんとなく対象特許に似たようなものを抽出するような検索式を立て、その中から論理付けの組合せに使えそうな資料をピックアップする事にしかならず、捜すべき資料を探しつくすという作業には至らない可能性が高いのです。
それに対して調査会社は「探し出すべき物」を明確化して該当する資料を検出するという方策に徹します。それは弁理士じゃないからという理由以上にその方が良い調査になる、つまり「知りたい事」を得るのに最適な方法であるという事を熟知しているからなのです。
というわけで「進歩性の議論も全てお任せで無効化できる資料(組合せ)を見つけてください」という要望であれば特許事務所に依頼すべきでしょう。しかし進歩性について自分達の解釈に基づいてきっちり探すのが希望なら調査会社の方が精度よく効率的に調査すると断言します。
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というわけで調査屋にとって弁理士が資格故にライヴァルになる事は考えにくく、結局は調査スキルがあるかないかという身もふたもない話だと思います。
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ご参加いただきありがとうございました。
途中で検出対象が変わってしまっているというのは、私もよく感じています。
最近は、メインの検索式を立てて、検索進捗に応じて追加検索式を立てるようなこともしていますが、見積もりと一致しないという問題が新たに生じます。
やはり、餅は餅屋ということかもしれません。
ところで、弁理士の日記念企画にご参加いただいた方、その他の知財系ブロガーが集うオフ会を開催します。
7月20日-8月3日の間で、時間は19時から21時位、場所は都内を予定しています(会費5000円程度)。
調整さん(https://chouseisan.com/s?h=c07ae442e5eb4038b0f9738fc6aab11a)→「出欠を入力する」からご参加できますので、ブログ名、ハンドル名等のどなたか特定できる名前で入力してくだされば幸いです。
投稿: ドクガク | 2018年7月 1日 (日) 18時26分
ドクガク様
コメありがとうございます。確かに予算が決まっている場合は辛いですよね…
あとお誘いありがとうございます。後ほど入力します。
投稿: 流浪の調査屋 | 2018年7月 2日 (月) 20時05分