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2018年7月 8日 (日)

数字で考える 出願前調査

特許出願の前に先行例を調査する方が良いという事は現在ではほぼ常識のように言われています。では出願前の調査がどれくらい役に立つのか?という点にについては「無駄な出願を排除できる」という観点でのみ語られていて、定量的な議論はあまりされていません。そこで出願前調査の有用性を数値で考えてみます。

一定期間内に100件の特許出願を行い、半分が特許として成立するという企業を例にとります。ここで出願から登録までにかかる費用(特許庁および特許事務所に払う金額、登録後の年金は考えない)を平均で50万円とすると全件で5000万円が必要になります。しかし特許になるのはその内の50件しかないのですから、出願経費を2500万まで圧縮できるのが理想的です。

ここで出願前調査を実施した時の経費を計算してみます。もし発明1件につき3万円分の調査を行うと50%の確率で出願回避のための有用な先行資料を検出できると仮定します。この場合、拒絶されるであろう50件の50%つまり25件において先行資料が検出され出願から除外する事ができるので、出願件数は100-25=75件になります。従って出願および調査の費用は
100件×@3万円+75件×@50万円=4050万円
つまり950万円の削減になります。では出願前調査が「6万円で80%の確率」だとどう変化するでしょうか。50件の80%つまり40件を除外することができるので出願件数は60件、費用は
100件×@6万円+60件×@50万円=3600万円
つまり1400万円の削減です。

この試算を見る限り、たとえ精度50%なんて程度の低い調査であっても思ったよりは高い効果があってやらないよりましに思えます。調査料の節約と言う観点からツールを用いた概念検索で上位ヒットをチェックする、なんてやり方もある程度の合理性があるのかもしれません。また調査精度を上げればそれなりに数字は上昇しますが、それほど劇的な変化にはなっていないような気がします。経費増加を伴う調査精度の向上はほどほどにしておくのがいいのでしょう。

もちろん結果は当初に仮定した種々の数値の変動によって上下します。また全出願に対する審査請求の割合というファクターが入っていないため、現状との乖離は否めません。ここで算出した数値が一般解とは言えませんが、おおまかな傾向はつかめるのではないでしょうか。またより実情に近い数値を算出するために、それぞれのより実測値に近い数値を代入してみるのもいいかもしれません。

なお出願前調査の「3万円で50%の確率」「6万円で80%の確率」というのは、世間一般で行われる調査に対する筆者の個人的な感覚です。自分自身は5~6万でもうちょっと高確率を目指しているのですが…

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