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2018年7月18日 (水)

誰が特許調査をするのか

特許調査の必要性は理解できても、実際に調査をする人がいなければ調査を行うことはできません。知財担当にせよ現場(研究者/技術者)にせよ、誰が調査を「行った方が良い」「行うべき」かという点が議論になることはあります。では誰なら十分可能なのか?という点から考察されることはあまりなさそうです。よって今回は特許調査に習熟するための時間と言う観点から考えてみます。

筆者の様な特許調査専門職については、大昔は「調査屋は100万件めくって一人前」とか言われました。これは公報をまとめた冊子体を「手めくり」で調査していた頃の話ですが、現時点でも100万件くらいスクリーニングすると「独り立ちした」調査屋になれると思います。スクリーニング素速度が100件/1時間、一日5時間作業するとして8~10年程度が修業期間でしょうか。

もっともこれは特許調査専門職は、多様な分野のいろいろな種類の調査に対応するスキルが求められているからこれだけ長い期間かかるわけで、極めて限定された技術分野に対する特定の種類の調査だけをやるのであればそこまで時間はかかりません。例えば特許庁の審査に必要な先行資料調査を行う登録調査機関であれば、最初の1,2か月の研修が終わった時点で「一人前」と見なされて業務を行います。もちろん最初から習熟した調査ができるわけではないですが、スキル習得まで数か月、だいたい数百時間といったところでしょうか。

では企業知財部員ではどうでしょうか。スキル習得まで数か月といっても就業時間の全てを特許調査に充てるわけにはいきません。多種多様な知財関連業務に追われている状況下では、特許調査に割く時間はせいぜい数パーセントと考えられます。そうなると調査業務を数百時間行うのにも数年はかかるのではないでしょうか。

でもこれは逆の言い方をすると、知財部員として数年経験したら特定の技術分野の特定の調査ができる程度に習熟することが望まれる、という事にもなります。例えば、担当する部門の出願前調査は自分で十分こなすが、技術分野がはずれた案件や無効調査・侵害調査等の突発的な調査は社内外の調査専門職にアウトソーシングする、くらいが在籍数年の知財部員に求められる調査スキルと思います。

そして現場の研究者や技術者は、特許調査はおろか知財業務に割く時間が少ないので、知財部員以上に習熟まで時間がかかります…といっても知財部員ですら数年かかるわけだから、現場担当者が特許調査に習熟する頃にはもう退職!なんてことになりかねません。身もふたもない言い方ですが「現場にちゃんとした調査を期待するのは無理」と考えた方が良いと思います。現場担当者は例えばweb検索程度の簡易検索や概念検索を行って公報に慣れ親しみ特許の意識を高める位を目指し、調査スキルの習得までは無理に求めなくてよいのでは~というのが筆者の個人的な感覚です。

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