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2018年9月

2018年9月 5日 (水)

言い訳(特許検索競技大会)

先日特許検索競技大会が開催されましたが、僕は「調査と検索はまったく別だから~」と称して一度も参加したことがありません。せっかくの機会なので、これまでの記事にからめながら自分の見解を書いてみようと思います。

競技大会では、あるテーマについて2~3時間で検索を行い結果を報告するという課題があります。つまり出される課題はこの短い時間内で作業を完結できなくてはならない、また各参加者の出来不出来が評価可能でなくてはならない、という事が本質的に求められます。したがって検索課題は、検索対象が明確で、想定された検索式に近ければ近いほど参加者は所望の資料を多く検出できるという様に設定されています。そしてこの点こそが実際の「特許調査」とかけ離れている部分だと感じます。

このblogでも
特許調査は目的ではないで書いたように、特許調査ではまずどのような資料を探すのかを決める事が重要かつ大変なことです。進歩性を否定するのはどんな記載か、実施技術が抱合されうる請求項はどんな記載か、それを明確化することによってより良い調査条件を策定するのが調査屋の手腕ですので、競技大会のように明確に定義されたテーマを探すのではその「手腕」を判別することはできません。

また
特許調査とは探し出すこと?でも書いたように、特許調査ではあるかないかわからないものを探すことが多く、競技大会のような「正解をなるべく多く出す」というケースは滅多にありません。特許調査は(正解がある)パズルではないのです。「あるものを効率よく探し出す」のと「あるかないかを判別する」のではやり方が異なります。

そして競技大会ではその時間的制約から数百件の公報から10~20件の公報を摘出するという作業になりがちですが、実際の調査では千~万件の公報を読みそのなかから1件あるかないかの公報を探し出すという作業が通常です。丁度良くヒットさせるために検索式を最適化するという工程は、実際の特許調査の作業には適さないことも多いのです。

つまりこの特許検索競技大会は、簡便かつ効率を求められる出願前調査のような調査の能力は判別できても、特許調査の多種多様な目的手法に対応するスキルを見極めるようなものではない、というのが僕の結論です。例えば知財部や特許事務所の人が特許検索に対して基礎的なまたは実務上の知識や技術を持っているか試してみるために参加するのはちゃんと価値があると言えますが、それは調査屋に求められる能力とは違うと思います。

なので特許検索競技大会で好成績を収めた事をアピールしているサーチャーや調査会社があっても、それは検索が上手なだけであって特許調査をちゃんと理解していない可能性があると念頭に置いた方が良いと思います。

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