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2018年11月

2018年11月27日 (火)

特許分類のはなし 4. 調査種類と分類の意味付け

(承前)やっと本題に入ります^^;

権利性調査の場合、探す対象となる資料は実施しようとする技術を請求の範囲内に含む特許です。つまりその特許は実施予定技術(またはその上位概念)を権利として請求しているわけであり、その技術自体が発明の特徴として書かれている可能性が高いと思われます。とすると探すべき特許には調査対象とする技術が付与されるであろう特許分類が付与されるている可能性が必然的に高くなります。つまり特許分類が「発明の特徴」を分類しているからこそ権利性調査では特許分類を軸として調査することが有効になってくるのです。

もちろん前記事で書いた通り単独の分類項目に網羅性はないので、ある分類が付与された特許文献を全て見たからその技術に関する資料を全てチェックしたことにはなりません。しかし調査対象の技術が付与される可能性がある分類をなるべく綿密に選抜することによって調査精度を上げることができます。

それに対して特許性調査は対象となる発明の新規性/進歩性を否定する資料、つまりその発明と同じもしくは部分的に類似した文献を探すことになります。従ってその文献が対象発明と同じ「発明の特徴」を有する必要はありません。

例えば出願前調査の様に「前にもありそうだなぁ」と思われる発明であれば同じ「発明の特徴」を有する資料群を探しても見つかる可能性は十分あります。しかし無効資料調査のように一度は同じ発明の特徴を有する資料が無いと認定された特許ではその可能性は低くなります。この場合は発明の特徴がたとえ同じでなくても実施例など明細書中にその技術が記載されている資料を探す必要性がでてきます。つまり対象特許と同じ発明の特徴を有さないわけですから同じ特許分類が付与されない可能性が高いことになります。従って特許性調査においては特許分類を「発明の特徴」の分類として利用するのは適切ではなく、一旦戻って「技術分野」「構成要素」を規定するツールとみなして考える必要があります。

まとめると現在の国際特許分類は「発明の特徴」を分類しており、それゆえ「発明の特徴」が主眼になる権利性調査とそうではない特許性調査では分類の意味付けが異なる、という事になります。もしこれが旧来の特許分類のように「技術分野」を分類するのであれば、調査の種類による分類の意味付けはそれほど変わらなかったと思います。

権利性調査/特許性調査におけるより詳細な分類選定については、実際の調査手法について具体的に記事にするまでお待ちください。ただいつになる事やら…

2018年11月25日 (日)

特許分類のはなし 3. どう付与されているか

(承前) 特許分類はその特許資料の「技術分野」に基づいて分類されていると思われがちですが、それは正確ではありません。確かに2014年という割と最近まで使われていた米国特許分類や1979年まで使われてた日本特許分類はそういう面が強いです。しかし現在世界中で使われている国際特許分類はその特許が用いられている技術分野というより「発明の特徴は何か?」に基づいて分類されています。

前回挙げた抗酸化剤の場合を例にとります。医薬品に用いる抗酸化剤に関する特許であっても、用いる抗酸化剤は一般的で特徴がなく、医薬品としての応用面に特徴があると見なせる技術であればC09K15の分類は付与されない場合があります。逆に実施例等では医薬品にしか言及されていないが、抗酸化剤として新規な特徴を有していて利用分野は例示に過ぎないと判断されればA61Kの分類が付与されない可能性もあります。実際の運用としては考え得る多方面の分類を付与するようですが、原則として「少なくとも一つ」の分類を付与する規則になっているので、付与されてなかったからといって文句は言えません。

実はこのことが前回書いた「付与された分類は十分条件であって必要条件ではない」という話につながってきます。調査担当者は探そうとする技術に分類を付与するのではなく、その技術に付与される可能性のある分類を選抜する必要があるのです。

そしてこの国際特許分類の「発明の特徴」に対する付与という基本理念が権利性調査と特許性調査での分類の意味合いに関わってきます(またも次回に続く)。

2018年11月19日 (月)

特許分類のはなし 2. 付与精度

(承前) 特定の分類の資料を全確認するという調査手法が客観的というのは、言ってみれば「特許庁がちゃんと分類を付与してるのなら調査も万全のはずだよ~」という事になります。ということは当然ながら分類付与が正しく行われている事が前提になります。では実際の付与精度はどうでしょうか。これについては二つの観点から考えてみます。

まず「付与されてる分類が正しいか?」という点では、少なくとも日本特許庁はかなり正確な方だと思います。ある公報においてそこに付与された分類が示す特徴が記載されてる確率はかなり高く、9割以上は正しいか許容範囲(より良い階層や分冊記号があるかもしれないが間違いとは言えない程度)というのが僕の感覚です。もっともこれほど分類付与が正確なのはJPOとEPO位で、他の庁ではそこまで信頼することはできないとうのも実感ではありますが。

では「付与されるべき公報に全て付与されているか?」といえば決してそうとは言えないでしょう。なぜなら一つの技術でも多様な見方ができるからです。例えば抗酸化剤の国際分類はC09K15/ですが、この分類が付与されていない抗酸化剤に関する特許も複数あり、それらの多くは医薬(A61K)や食品(A23L)といった分類が付与されています。国際分類は「少なくとも一つ」分類を付与する事がルールであり、つまりその特許の特徴をどう解釈するかで必ずしも考えられる「全ての」分類が付与されるわけではないのです。

こうして考えると「ある特許分類が付与された資料を全件見る」という調査手法は十分条件とは言えても必要条件ではない、と考えるべきでしょう。この方法を取るなら対象となる技術が付与されうる「全ての」分類をチェックする必要性がでてきます。

ここでようやっと「特許分類は何を分類するか」という話につながるはずだったのですが、すみませんまたもや次回に続きます。

2018年11月18日 (日)

特許分類のはなし 1. そもそも論

先日以下のようなツイートをしたところ予想外に反響がありました(バズった~と言うのでしょうねw)。
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そういえば公知例調査と権利調査では分類の捉え方(というか使い方)が違うぞ~って話、あんまり世間で出てないですよね?
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この点について考える前に、特許調査で分類を用いる意味について僕の考えを述べておきます。

このblogで何度か書いているように、特許調査の困難な点は
所望の資料が「無い」と見極めることです。通常は「悪魔の証明」ともいわれるとおりない事を証明することは困難か不可能です。そこで特許調査の場合は存在する可能性が蓋然的にあると思われる領域を探すことである程度の確率を以って「無い」と見なすことになります。この領域を策定する場合の一つの手法として特許分類を使う事ができます。

例えば所望の記載がある資料を探す場合に「ある特許分類が付与された資料を全件見たが存在しなかった」となれば、それは特定の領域には存在しないという客観的な事実になります。そこで次のステップとして「十分と判断する」か「別の分類を探す」という選択肢になるでしょう。つまり調査良し悪しを分類付与の精度の問題として考えることが可能になります。

では分類付与の精度はどれくらいなのか?という問題は「特許分類は何を分類するか」という複雑な話に関わってきますので次回に続きます。

2018年11月10日 (土)

ライトングトーク「特許調査は勘違いされている」

昨日(11/9)、知財系オフ会@東京 2018 秋 および 知財系ライトニングトーク 第五回に参加し、表題のタイトルにて5分間のスピーチを行いました。その時の原稿を掲載します。あくまで原稿ですしお酒の席でもありますので(*^-^)一字一句同じには喋っていませんが、趣旨はおよそこの通りだと思います。因みにスライドはなしです。

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いきなりですが質問です。「特許調査とは、実際の作業として何をする事だと思いますか?」…例えばこういう回答があると思います。「特許調査とは所望の資料を見つけ出すことだ。」確かにそれは正しいです。しかし本当にそれだけでしょうか。


例えば侵害調査では、自社が実施する技術に対して障害となる特許が無い方がうれしいのですからある意味「見つけ出さないこと」が目的になります。それに対して無効資料調査はもちろん見つけ出すことが求められます。しかしながら審査、審判、裁判を経て確立した権利に対して特許性を否定する資料となると実際には存在しないのかもしれない。これ以上の探してもしょうがないとめどをつけるために調査をする、そんな経験をした方もいらっしゃるかもしれません。とすると特許調査とは所望資料を見つけ出す事というよりも「あるかないかを見極めること」という方がより正確だと思います。

「なるほどわかった。それで何が違うんだ?」と思われる方もいるでしょう。ここでたとえ話をします。探し物をするとき「昨日使ったボールペンをどうしたっけ?」という時と「この部屋に何か丁度良い筆記用具、例えばボールペンとかないかな?」と思って探す時、探し方は変わってきますよね?

例えば昨日のボールペンの様にあることがわかっている、どんなものかも明確であるものを探す時は、ヒントを基にパズルを解くように効率的に探り当てる事が可能です。でもこのような「効率的な」やり方では、どんなものがあるかわからない、ましてやあるかどうかも不明という場合には通用しません。もちろんそのやり方で見つけ出したらラッキーです。しかしそもそも探すべき場所にたどり着いているかどうかすら判断することができないのですから、このような状態で見つけ出せなかった時にそれで「ない」と判断するのはとても危険です。つまりないという事を前提にした別の調査方法が必要なのです。

以上をまとめますと、特許調査とは所望の資料を探し出すことというよりはあるかないかを見極める事であり、特に「ない」と見極める事が困難かつ大変であり、また我々特許調査屋の腕の見せ所である、というのが本日皆様に伝えたかったことです。

では所望の資料がないという事を言うためにどのような調査をすれば良いのか、それについては時間となりましたので別の機会に披露させていただきます。ご清聴ありがとうございました。

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