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2019年4月

2019年4月28日 (日)

「技術者が行う特許調査」補遺

4/6の記事について、このような技術者が行う調査が有効になるのは以下の様な場合と思われます。
1) 技術者が年数件の頻度で発明を創作する。
2) 一つの発明/出願に対する重要度が高くない。
3) 出願した場合の登録率が低い。

 

発明自体の件数が少なければ、知財担当者の労力自体が少なく、また技術者の調査能力向上にもつながりにくいので知財部で調査した方が良いでしょう。また一つの発明がその会社にとってとても重要な地位を占めるような場合は、出願前であっても精密な調査を実施した方がよいと思われます。3)ですが、化学系は登録率も高く調査自体も簡単ではないので、技術者の簡便な調査では効果が出ない可能性があります。

 

以上をまとめると「技術者が行う特許調査」が効果的なのは出願件数が100件/年以上はある機械/電気系の中規模もしくは大企業ではないでしょうか。というわけでご連絡お待ちしてますw

2019年4月13日 (土)

テーマ調査の難しさ ②特許固有の難点

テーマ調査におけるテーマとはあくまで「一言で言える」テーマであって解釈に幅があるため検出条件を定義するものではない、と前記事で書きました。ではテーマの語義が明確であれば的確なテーマ調査が実施できるでしょうか。そこには特許明細書の書き方、特許の在り様に起因する特許特有の問題点が存在しています。

一例として「クリスマスツリーにLED照明を用いる技術」に関する特許公報を収集するとします。この場合「クリスマスツリー」も「LED」も定義は明確ですし、テーマが指定する技術内容もはっきりして、そこには疑問がないように思えます。

それでは「クリスマスツリーにLED照明を用いる技術」が書かれている特許資料とはなんでしょう。例えば「クリスマスツリー用にLEDを小型化した/点滅制御装置を改良した」とか「LEDを用いるためにツリーにある部材を設けた」等の記載があればその公報は正しく該当します。しかしながらLEDや制御装置の改良に関する特許で、明細書の後ろの方に一言だけ「この発明のLEDは○○、××…、クリスマスツリー等に用いる事が可能である」と書いてあった場合は該当するでしょうか?発明者が利用分野としてたまたま思いついたから取りあえず追加しただけであって、クリスマスツリーに使うことは特に想定していない可能性も大いにあります。

そんな「つけ加えただけ」の資料を除外するために、特許資料なのだから技術が意図するところが【要約】【請求の範囲】等の特定の項目に書いてあるのでは?という考えもあるでしょう。でも出願人がクリスマスツリー用に開発したLEDだが他用途にも利用可能であると見いだした場合、わざわざ請求の範囲をクリスマスツリーに限定せず出願するのはよくある事です。そうすると【要約】【請求の範囲】にはクリスマスツリーの語句が無くても、実際には「クリスマスツリー用LED」の技術に関する公報といえます。こういう公報では特定の項目だけではなく全文の記載からの判断が必要になります。

では実施例として具体的な記載があればよいでしょうか?例としてクリスマスツリーに関する発明で、実施例中に照明として「LED」と記載された公報があったとします。この公報では確かに「LEDを用いたクリスマスツリー」が例示されていますが、その記載ではLEDを用いたからこその発明がなされたのか、もしくは点光源の種類は発明に無関係で単にLEDを例に選択して説明したのかを判別することはできません。つまり「クリスマスツリーにLED照明を用いる<ための>技術」かどうかはわからないのです。

このように「クリスマスツリーにLED照明を用いる技術」というテーマの意味するところが明確であっても、公報からは「クリスマスツリーにLED照明を用いる」事が記載されているかどうか、また【要約】【請求の範囲】【技術分野】【実施例】等のどこに記載されているかを区別することが可能なだけなのです。つまり公報に記載された発明が「クリスマスツリーにLED照明を用いる」事を<主眼>にした技術かどうかは実際のところ出願人しか知り得ず、記述内容から判定することは困難なのです。

前回と今回の記事を含めてまとめます。調査テーマが簡潔であればあるほどテーマの語義が明確ではないため、また明細書がそもそも発明の主眼を読み取にくい書かれ方をしているため、適否の線引きが曖昧になり判断が難しくなります。依頼されて行う調査の場合は特に「主観的に」判断する事ができません。依頼元に、あくまで記載内容を基に摘出する作業であることを納得してもらい、要否の線引きを明確化し調査者との間で合意する事が必須である…これがテーマ調査の難しさと思います。

2019年4月10日 (水)

テーマ調査の難しさ ①「~に関する」は危ない

このblogで何度も書いているように、特許調査は「探す物」「探す場所」という観点から特許性調査・権利性調査・収集調査と3つにわけており、特許性調査と権利性調査ではその在り様から「探す物」「探す場所」が一義的に限定されます。それに対して「こういう技術に関する特許を集めてほしい」というようなテーマ調査の場合、「探す物」「探す場所」は任意であって調査依頼元の要望に応じて設定されます。
このようなテーマ調査では往々にして依頼元の所望する「探す物」は一言で言い表せるような簡潔な「テーマ」で示される事がありますが、実は簡潔なテーマで指示される時ほど調査が困難になるケースが多いのです。

例えば「AIを使った農業機器に関する特許」を収集する場合を考えます。このテーマ自体はとてもわかりやすく、具体的な技術のイメージも浮かんできます。では「AI」とはなんでしょうか。公報中に「AI」「人工知能」の文字が書いてあれば確かにAI技術でしょう。でも「AI」の文字が無くても検知した情報を収集解析し、それを基に判断して自律的に作動する技術であれば人工知能と言えそうです。そうはいってもフィードバック制御やファジー制御のような技術を人工知能とするのは範囲が広げ過ぎのように感じます。人工知能そのものに関する特許であれば具体的な記載があるので何らかの線引きは可能でしょう。でも農業分野への応用となると公報中にどのような用語・記載でAI技術が書かれ得るのかは千差万別で、「何が人工知能か」という定義が難しいのです。

その一方で「農業機器」についても、トラクターとか温室管理装置とか搾乳機なら一目瞭然ですが、該当するかどうか悩ましい資料も出てきます。カントリーエレベーターの様な穀物貯蔵設備が農業機械なら、収穫した野菜や果物を保存する冷蔵庫だって農業機械と言えなくはない。そうすると収納するものがカボチャか小麦粉かお惣菜かで冷蔵庫が農業機械か否かを判定するのでしょうか?または薬剤散布ドローンだって、散布場所が畑や牧場だったら農業機械だけど公園やテーマパークなら農業機械ではないということになってしまいます。やはり「何が農業機械か」という定義は恣意的になってしまいます。

このようにテーマ調査では、テーマが簡潔であればあるほど適否の線引きが難しいという事が良くあるのです。結論としてテーマはあくまでテーマであって「探す物」ではなく、検出すべき資料を明確に定義し、依頼元と調査実施者の間で事前に合意しておかないとテーマ調査はいい結果を得られない、という事になります。

2019年4月 6日 (土)

「技術者が行う特許調査」レジメ

レジメ第2弾として技術者向け特許調査の講義内容を考えてみました。これもまだ骨子だけです。特に検索式の実例はいろいろ考える余地がありますし、要望に応えることもできそうだと思います。

<前文>
研究職や現場担当などの技術者は実際に発明を創出する本人であり、発明をもっともよく理解しているはずです。従って技術者が発明前調査などの特許調査を行うことには大きな意義があります。しかしながら「特許調査は難しい」「時間がない」などの理由で実際に調査が行われることは少なくありません。そのような非知財部門向けに通常行われるセミナーでは特許調査の容易性をアピールして調査実施を勧奨していますが、短期間でスキルを習得するのは難しく、そのためたまに実行しても効果を上げにくいという悪循環に陥りがちです。
この講義では「特許調査は簡単」ではなく視点を変えて「技術者がやるような簡便な調査でも十分意義がある」という事を説明し、その後の調査スキル向上への「糸口」を示した上で技術者へ調査実務に誘う、という方法で話を進めたいと思います。

対象
①非知財部門の技術者(研究職、技術者)
②知財担当者(①への指導教育役として)

<目次>
0 講義の目的
  「調査は簡単ではない」
  「技術者は暇じゃない」
1 なぜ技術者がやるか
1-1 技術者がやるメリット
   実際に発明している
   特許に慣れる→発明の向上
1-2 担当者と能力の関係
   技術者/知財担当/調査専従
   技術理解と調査能力は負の相関
1-3 調査能力と時間
   調査専門職 1万h
   特定調査 数百h
   →とてもそこまで求められない
1-4 調査精度と効果
   数値例 50%精度でも経費削減
   →精度が低くても効果はある
1-5 技術者に求められる調査
   「簡易的」でよい
2 実際の作業
   発明提案書を書く前に1~2時間作業
3 特許調査をやる前に…
3-1 自社先行技術の確認
   発明提案書ファイル
3-2 概念検索
   発明の言語化
4 実際の特許検索
   特定技術の出願前に特化
4-1 概念的検索式
   調査テーマの集合化
4-2 キーワード検索
   立式は容易 拡散しやすい
4-3 分類について
   FI/Fターム
   事前把握が重要
4-4 実例
(→ここは出席者/顧客に合わせて)
5 結論
   見つける事だけが重要ではない
   技術者の能力向上

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<1-2 担当者と能力の関係>や<1-3 調査能力と時間>はこのblogで7月に書いた記事の様な話になる予定です。<4-4 実例>については、特定の企業で話をする場合は実際の技術/発明/出願に応じて対象案件を選んで調査手法を講義する事が可能と思います。

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